節税を考える前に!所得税の仕組みについて知っておこう!その③【各所得と赤字を相殺できる損益通算】

今回は所得税計算の過程の中で、一番最初の手順である『所得の合算』部分での『損益通算』について紹介していきます。損益通算に関しても所得税を軽減する効果があるので、その理由を学んでいきましょう!

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所得税の計算方法

まずはじめに、所得税の計算方法について少しおさらいしておきましょう。

簡単な所得税計算の流れは

  1. 10種類の各所得(総合課税のみ)を合算して『総所得金額』を計算する
  2. 『総所得金額』から『所得控除』を差し引いて『課税総所得金額』を計算する
  3. 『課税総所得金額』に税率をかけて『算出税額』を計算する
  4. 『算出税額』から『税額控除』を差し引いて実際に支払う税金額を計算する

というものでした。

今回解説する『損益通算』は、①『各所得を合算する』の部分での話なので、所得税のもとになる『総所得金額』を算出する上で決まりとなっています。

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所得の種類

さらに、所得の種類についても少しおさらいしておきましょう。

お金には様々な受取り方があります。例えば、

  • 銀行に預けた預金の利子
  • 株式を所持している際の配当金
  • 不動産を貸し付けている場合の家賃収入
  • 個人事業主やフリーランスがお客さんから受け取る報酬
  • 毎月の労働に対するお給料
  • 使わなくなったものを売却した時の利益
  • 保険を解約して受け取る解約返戻金
  • 社会保険から受け取れる年金
  • 退職金

などなど…

すべて同じお金ですが、これらは税金を計算する上で『所得』という名前で種類が分類されています。所得は全部で10種類あり、各所得で計算方法が異なります。

所得の種類
  • 利子所得
  • 配当所得
  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 給与所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得
  • 山林所得
  • 退職所得

(参考:国税庁|所得の種類と課税のしくみ

所得税を計算する際には、これらの各所得を合算して1年間(1月1日~12月31日)に得た全ての所得の総額を算出します。ですので、毎月の給料以外にアルバイトや副業を行っている場合にはもちろんその収入に対しても税金が課されることになります。

さらに、よく忘れがちですが、保険を解約した場合に受け取れる解約返戻金や、いらなくなったモノを売却した際に利益が生じた場合にも原則所得税が課されますので気をつけましょう。

各所得の計算と損益通算

では次に、各所得の計算方法を給与所得事業所得を例にして考えていきましょう。

所得の計算(給与所得を例に)

10種類の所得はそれぞれで計算方法が異なり、受け取った金額=所得という訳ではありません。

例えば、給与所得の場合はその人の1年間の給与収入。つまり、額面の支給金額(年収)から給与所得を計算します。計算方法は給与収入の金額に応じて次の表に基づいて『給与所得控除』を算出し、給与収入から差し引きます。

[su_note note_color=”#FFFF66″ text_color=”#333333″ radius=”3″ class=”” id=””]給与所得=給与収入-給与所得控除[/su_note]

図8

(給与所得控除|国税庁から作成)

上記の表によると、給与収入が180万円以下の場合は給与所得控除は『収入金額×40%-10万円』で計算します。しかし給与収入が55万円に満たない場合は給与所得控除が55万円となるので、『給与所得 < 給与所得控除』となり、この場合の給与所得は「ゼロ」となります。

給与所得についてはこのように計算しますが、各所得によって計算方法は異なります。給与所得に関しては計算後に給与所得の金額がマイナス(赤字)になることはありませんが、他の一定の所得の場合は所得金額が赤字になることもあります。

事業所得には赤字がある

では、個人事業主やフリーランスの主な収入源である『事業所得』はどうでしょうか。

事業をしてお金を稼ぐには、

  1. 事業をするためにお金(経費)を使う(商品や備品代、人件費、家賃など)
  2. お客さんから報酬(売上)を受け取る

というのが一般的な流れです。ただ、報酬(売上)が支払うお金(経費)を上回っていれば利益が残りますが、その逆で経費の方が多いと赤字になってしまいます。

ただでさえ赤字な上に、さらに税金を支払えというのは少し酷ですよね。

なので事業所得の計算方法は次のようになっています。

[su_note note_color=”#FFFF66″ text_color=”#333333″ radius=”3″ class=”” id=””]事業所得=総収入金額-必要経費[/su_note]

(参考:事業所得の課税のしくみ|国税庁)(青色申告者の場合はさらに青色申告特別控除を差し引きます)

ですので、総収入金額に対して必要経費が多かった場合には事業所得の金額が赤字になる場合があります。ではこの赤字、所得を合算する際にはどのように扱われるのでしょうか?

損益通算

実はこの赤字、所得を合算するタイミングで他の所得から差し引くことが出来ます。

これを損益通算といます。

もし1年間で複数の種類の所得を得ている場合に、プラス(黒字)の所得マイナスの所得(赤字)が同じ金額なのであればこれを相殺して所得が「ゼロ」になります。

ただし、全ての所得が赤字の金額を他の所得と損益通算できる訳ではありません。赤字によって他の所得を軽減できる所得は限られているのです。

損益通算できる所得

損益通算が可能な所得は全部で4つあります。それは、①『事業所得』②『不動産所得』③『山林所得』⑤『譲渡所得』の4つの所得です。

事業所得

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。(引用:事業所得の課税の仕組み|国税庁

不動産所得

不動産所得とは、次の①から③までの所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除きます。)をいいます。

  1. 土地や建物などの不動産の貸付け
  2. 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
  3. 船舶や航空機の貸付け

(引用:不動産収入を受け取ったとき|国税庁

山林所得

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいいます。ただし、山林を取得してから5年以内に伐採又は譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得か雑所得になります。また、山林を山ごと譲渡する場合の土地の部分は、譲渡所得になります。

(引用:山林所得|国税庁

譲渡所得

譲渡所得とは、一般に資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。(引用:譲渡所得|国税庁)

ただし、譲渡所得で損益通算できる所得は、「ゴルフの会員権、土地や建物、株式」を除いた資産を売却した際に生ずる所得で、これらのことを『総合課税の譲渡所得』といいます。

損益通算対象外のケース

また、損益通算ができる4つの所得であっても、次のようにその内容によっては損益通算の対象外となる場合があります。

損益通算が対象外な場合
  1. 不動産所得や譲渡所得の赤字のうち、生活に通常必要でない資産の赤字
    (生活に通常必要でない資産:別荘や骨とう品、事業用以外の競走馬、ゴルフ会員券、リゾート会員券などの資産)
  2. 不動産所得の赤字において、必要経費の中の土地等の取得時に借りたお金の利子分
  3. 不動産所得が発生する事業を行っている民法組合などの個人組合員(組合事業に係る重要な業務を執行する個人組合員を除く)の組合事業から発生した赤字
  4. 土地建物の譲渡所得の黒字や赤字
    (ただし、居住用財産の買換えの譲渡損失や特定居住用財産の譲渡損失金額については、一定の要件の下で損益通算することができます。)

(参考:確定申告で損益通算ができる所得には何がある?その仕組みを知ろう|CalQ

損益通算を利用した節税方法

所得税の節税の方法の中には損益通算をうまく利用する方法があります。

それが、不動産投資を利用する方法です。

損益通算を利用して節税をするには、先程説明した4つの所得のどれかを赤字にする必要がありますが、不動産投資では『不動産所得』を赤字にすることによって損益通算により所得を軽減することができます。

不動産投資とは、『賃貸用の不動産を購入して有料で人に貸し、不動産所得を得る投資のこと』です。

具体的には、銀行から借り入れを行って不動産を購入し、そこを貸すことによって賃貸業を営むという方法です。ただ、節税をするには1年間の所得を赤字にする(収入-経費=マイナスになる)必要があります。

不動産投資の場合の収入は主に家賃なので、その収入の金額を経費が上回れば赤字をつくれるという事になります。

この経費には様々なものがあり、金額が大きな経費として『減価償却費』があります。減価償却費とは不動産の購入価格を一定の割合で毎年経費に算入するものです。ただ、この減価償却は建物によって期間が決められているので、いずれは無くなってしまいます。

また、他にも購入資金を銀行から借り入れることでその利息分も経費にすることができます。

ですので、お金を借りて不動産投資を行い、家賃収入を借り入れの返済に回すことで、赤字を出しながら、借り入れの返済後は不動産を所有することができるというものとなっています。

しかし、「減価償却が無くなる」または「住宅ローンが終わる」と経費に計上できる金額がガクッと減ってしまいます。そうなると節税効果がなくなるので、不労所得として持ち続けるのか、売却するのかなど、しっかりと出口を決めておく必要があります。

また、他にも不動産投資にはたくさんのリスクがあるので、しっかり勉強してから始めるようにしましょう。

確定申告が必要

最後に、この損益通算を適用するには『確定申告』という手続きが必要です。確定申告というのは1年間の所得を計算して、国に所得税を納める制度です。

サラリーマンの方など、給与所得のみの場合には『源泉徴収』という制度が適用され、毎月の給料から会社が天引きで所得税を徴収して代わりに税務署に納付されることがほとんどです。この場合には年末に『年末調整』という手続きを行い、その時点で課税関係が終了します。

ですので、確定申告にはあまりなじみが無く、最初は難しいと感じるかもしれませんが、これは自分の税金であり必要な手続です。一度経験するとその後は楽なので、税務署税理士FPに相談して自分でできるようにしておきましょう。

まとめ

今回は所得を計算する過程の所得を合算する部分で適用できる制度の『損益通算』について解説しました。どのような理由で所得を軽減する効果があるのか理解していただけましたでしょうか?

損益通算を利用した節税対策である不動産投資には大きなメリットがありますが、たくさんのリスクもあります。不動産についてあまり詳しくない場合には逆に大きく損をする可能性もありますので、税金に加えて自分で不動産の市場の動向などについて勉強するか、詳しいFPなどに相談してから実践するようにしましょう。

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